この記事を
PDFで読む

MESSAGE / インタビュー

SPECIAL / スペシャル 2026.05.29

「支援の見直し」が問われる転換期
育成就労制度と特定技能のこれから

JAC理事長 三野輪 賢二 Kenji Minowa

JAC理事長 三野輪 賢二 Kenji Minowa

 育成就労制度の運用開始が迫り、外国人材の受入れはいよいよ新たな局面へ。制度が変わるだけでなく、これまでの支援のあり方そのものが問い直されています。現場で何が起きているのか、日本語教育やキャリア支援の課題も含め、三野輪理事長に伺いました。

聞き手:JAC編集部 2026年3月24日取材

外国人材と
企業へ"確実"に
支援が届く
仕組みづくり
育成就労制度と特定技能制度の一体的な運用が始まりますが、JACとして今年度の課題をどのように捉えていますか?

 支援が本当に必要な特定技能外国人のもとへ、確実に届く仕組みに作り直していく。それが今年度の一番大事な課題です。
 日本語力の差は、指示の聞き違いや作業ミスといった安全上の問題にもつながりかねないにもかかわらず、現場では同じように働くことが当たり前になっています。特定技能と育成就労では求められる日本語力が違うことを踏まえ、本人と受入企業の両方に、日本語教育についての情報をしっかり届けることが急がれます。
 制度の全体像がはっきりしてきたのはごく最近のことで、対応すべき課題は少なくありません。それでも今年度は、日本語教育も含めた支援の土台をしっかり固め直し、どの外国人材にも公平に支援が行き渡る仕組みを着実に実現していきます。

受入企業に対しての支援は、どのように考えていますか?

 日本語の問題は、現場の安全や仕事の正確さに直接影響します。育成就労制度が始まると、日本語レベルの違う人材が同じ現場で働く場面がさらに増えます。だからこそJACとしても、企業のみなさんと一緒にこの課題に向き合っていきたいと考えています。
 「日常会話はできるのに、現場の細かい指示がうまく伝わらない」という声はよく聞かれます。紙に書かれた作業指示を正しく読み取れないケースもあり、話す力だけでなく、読み書きの力も育てることが欠かせません。そのためJACでは、日常会話の習得にとどまらず、現場の指示や安全管理に関わる内容をきちんと理解できる、実際の仕事に役立つ日本語力の育成を大切にしています。オンラインやe-Learningなど、働きながら学べる環境も整えています。
 安全衛生教育や技能講習についても、受けられる機会を用意するだけでは足りません。学んだ内容がきちんと伝わるよう、母国語での対応を広げています。こうした取組みが積み重なることで、外国人材が不安なく働け、受入企業も安心して仕事を任せられる職場がつくられていくと信じています。

キャリアアップ支援についてはいかがですか?

 特定技能2号への移行は、本人にとっても受入企業にとっても、共通の目標となるはずです。資格を取り、在留資格を得て、日本で長く働き続けてもらうこと。その歩みを支えることが、私たちの大切な仕事だと感じています。
 JACの教育プログラムは、もともと2号移行を見すえて組み立てたものです。特別教育や技能講習にも力を入れており、受講した方々からは「わかりやすい」と好評をいただいています。母国語による職長・安全衛生責任者教育の令和9年度内の実施に向けた準備にも取り組んでいます。試験については、ルビを振ったり、出題範囲を整理したりと、受験しやすい工夫を重ねてきた結果、2号資格試験の合格率も着実に上がってきました。
 当初は合格率が低く、多くの方にご苦労をおかけした時期もありましたが、みなさまのご協力もあって着実に改善が進んでいます。引き続き、一人でも多くの方が2号移行を果たせるよう、支援の充実に取り組んでまいります。

JAC理事長 三野輪 賢二 Kenji Minowa
働き先として
選ばれ続ける
国へ
共生社会の実現に向けて、JACとしてのお考えをお聞かせください

 ここ数年、外国人に関する問題は建設業に限らず、社会のあちこちで取り上げられるようになりました。外国人材の受け入れに関わってきた立場として、私たちはその現実としっかり向き合い、「共生」を大切な理念として掲げ、それを現場でしっかり実現していけるよう、取組みをさらに充実させていきたいと考えています。
 生活面での支援として、とりわけ力を入れているのが医療の分野です。言葉の壁のせいで病院に行けなかったり、症状をうまく説明できずに適切な治療を受けられなかったりする。そんな困りごとが実際に起きています。医療通訳を含む支援の仕組みをつくったのは、そうした問題を少しでも減らすためです。特定技能外国人にとっても受入企業にとっても、「いざという時に頼れる」という安心感は、働き続けるうえで大きな支えになります。

最後に、受入企業へのメッセージをお願いします

 世界中が外国人材を求めて動くなか、「日本が選ばれ続けること」は、建設業にとってもJACにとっても、避けて通れない課題です。JACとしてできる支援は精いっぱい続けますが、それだけでは十分ではありません。毎日の現場で外国人材に一番近いのは、受入企業のみなさんです。JACの支援と企業の関わりが両方そろって初めて、外国人材が本当の意味で安心して働ける環境が生まれます。JACと企業のみなさんがそれぞれの強みを生かし、一緒に支えていく。その積み重ねこそが、外国人材との信頼関係を育む一番の近道だと信じています。
 JACとしても、みなさまとともに歩みながら、特定技能外国人が安心して働き、生活できる環境づくりを進めてまいります。引き続き、ご理解とご協力をお願い申し上げます。