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VOICE / JAC活動レポート

HELPFUL / お役立ち 2025.05.30
VOICE JAC活動レポート

安全衛生教育で「日本の安全」を世界へ
“JACオンライン特別教育/JAC技能講習”

 外国人就労者の安全を守るために、JACが2024年に開始した「JACオンライン特別教育」と、2025年から展開を始めた「JAC技能講習」。言葉の壁を越え、誰もが等しく安全衛生教育を受けられる環境を目指すこの支援事業の背景には、長年にわたり建設業の外国人材に携わってきた竹内さんの思いがありました。立ち上げに至るまでの苦労や、今後の展望について伺いました。

担当者:JAC事業部 竹内

担当者:JAC事業部 竹内
「必要なのに届かない教育」からの出発
取り組みを始めたきっかけを教えてください

 JACが設立された2019年当初から、私自身、建設現場で働く外国人への安全衛生教育の必要性を痛感していました。特定技能制度によって外国人が自由に働けるようになったのはいいのですが、就労にあたって必要な資格や特別教育の受講機会が非常に限られていたのです。とくに地方では講習そのものが開催されないことも多く、言葉の壁も大きかったため、企業から「どこで資格を取らせればいいのか」と相談が相次ぎました。

特定技能制度は整っていても、安全衛生教育を学べる場がなかった?

 そうです。参加人数が10人以上集まらないと開講できない、講習は遠方でしかやっていない、外国語での対応がない。企業は1人か2人の外国人を受け入れても、その教育の機会がないのです。そんな状態が続いて、外国人が現場で事故に巻き込まれたらどうなるのか。これは命に関わる問題です。だからこそ、制度の隙間を埋めるために「JACで仕組みをつくろう」と動き出したというわけです。
 私たちが目指したのは、「外国人が、どこにいても、母語で、安全衛生教育を受けられる仕組み」です。それが「JACオンライン特別教育」の構想につながりました。実現までには丸1年かかりましたが、必要性を訴え続け、行政にも働きかけてようやく了解されたことは、大きな一歩だったと思います。

外国人への安全衛生教育の知識やノウハウをチームで共有する

外国人への安全衛生教育の知識やノウハウをチームで共有する

翻訳・配信・確認、仕組みを支えるプロ意識
「JACオンライン特別教育」にはどんな特徴がありますか?

 最大の特徴は、外国人の母語で学べることです。現在までに英語、ベトナム語、インドネシア語、カンボジア語、中国語に翻訳し、今後はタイ語、ミャンマー語、タガログ語など他言語にも、順次対応する予定です。オンラインで受講ができるように、テキスト教材の翻訳だけではなく、AIナレーションなどの技術を活用しながら、講習自体も翻訳した動画を提供することで、限られた時間で必要な情報を正確に伝える工夫をしています。

苦労した点はどんなところですか?

 1科目を作るには、テキスト教材の翻訳、講習シナリオの作成、ナレーションや字幕付きの動画制作など、何十もの工程が必要になります。実際に取り組んでみて、苦労した点は数え切れません。ナレーションにはAIも活用しましたが、細かいミスもあり、何度も修正を重ねる必要がありました。それでも、命に関わる内容だからこそ、翻訳は絶対に妥協できない部分です。翻訳者の地道な努力と技術の進化もあって、今ではとても自然でわかりやすい教材が整ってきています。初めて実施したベトナム語の講習には12人が参加し、受講後に「とてもよく理解できた」と言ってもらえた時は、本当にうれしかったです。

実技の教え方に関するサポートも行っているそうですね?

 実技教育は各受入企業が担う必要があります。つまり、企業側が「自分たちでどう教えるか」を考え、実行することが求められるのです。実際、現場からは「教え方がわからない」「どこにポイントを置けばよいのか不安だ」といった声も多く寄せられました。そこでJACでは、企業向けに「実技の教え方」を伝える動画コンテンツを用意しています。この取り組みは、外国人への指導を通じて、日本人自身の教育にも良い影響を与えていると感じています。動画を通じて基本を学び直し、教える側としての意識を再確認する、“学び直し”のきっかけになっているのではないでしょうか。

JAC内でも、オンライン特別教育の受講状況をモニタリング

JAC内でも、オンライン特別教育の受講状況をモニタリング

資格は未来を開く“お土産”
経営者にも広がる意識改革
「JAC技能講習」についてはいかがですか?

 2025年からベトナム語とインドネシア語で5科目の技能講習を開始しました。特別教育と違って、技能講習は国家資格ですから、対面で通訳を付けて実施しています。講習に付く通訳には、必ず技能講習の受講経験があることを条件としています。これは非常に大変な運用ですが、外国人が日本で安全に働き、さらにその資格を持って母国に戻っても通用するようにするためには、必要な仕組みです。

資格取得を強く推進する理由を教えてください

 彼らは日本で得た資格や知識を母国に持ち帰り、次の世代に教えてくれるという考えもあります。安全手順や作業の意味、日本の施工基準が、自然とその国に広がっていくのです。これは、私たちが「押しつけ」ではなく「自発的な広がり」を目指しているからです。そして私は、こうした資格や経験が、彼らにとっての“お土産”になると考えています。ただ働いて帰るのではなく、「日本で得た安全の知識を持って帰った」と言えるようにしてあげたい。そんな思いで取り組んでいます。

こうした教育が、企業側の意識にも影響を与えていると感じますか?

 はい、少しずつ影響は出てきていると感じます。ただ、多くの経営者が、安全衛生教育の重要性を現場に十分に伝えられていないような気がします。実際、実技を教えられない企業の方から問合せが来ます。そこで私たちは、動画教材で「教え方」そのものも伝えようとしています。「外国人に安全衛生教育をする」とは、「自分の現場の安全を守る」ことです。経営者が少しその意識を変えれば、現場の意識も変わります。また、生活習慣や宗教への配慮など、外国人への小さな気づきや敬意の積み重ねも重要です。より良いチームワークと安全な現場を築いていく、その経験を日本からアジアへ、世界へと広げていくのが、私たちJACの思いです。

安全衛生教育の機会を積極的に使ってほしい

安全衛生教育の機会を積極的に使ってほしい

「JAC安全衛生教育サポート」ホームページで受講申込み受付中

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