受け入れるだけで
終わらせない。
育成が定着を生む。
JAC理事長 三野輪 賢二 Kenji Minowa
特定技能制度の定着とともに、建設現場では外国人材の姿が当たり前になりつつあります。そんな今だからこそ、単なる人手不足の補塡ではなく、外国人材を「一人の仲間」として受け入れ、ともに働く姿勢が問われています。受入企業に求められる心構えと、定着・育成の鍵について三野輪理事長に伺いました。
聞き手:JAC編集部
2025年7月29日取材
ただの労働力ではなく、ともに働く“仲間”として迎える
外国人材の受入れが進むなかで、企業に求められる姿勢とは何でしょうか?
外国人材を単なる「労働力」として見るのではなく、「仲間」として迎え入れるという視点が、今最も求められていると感じています。「数年間だけいてくれればいい」という受入れ方では、信頼関係は築けませんし、人材の成長も望めません。彼らは異国の地で生活し、働くことを決断した若者たちであり、人生を懸けて日本を選んでくれています。
つまり、受け入れる私たちは「一人の人材を雇う」のではなく、「一人の人生を預かる」という意識を持つべきです。その重みを理解し、責任を引き受ける姿勢が、定着や育成の土台になります。現場の雰囲気は、受入れ側の心持ちひとつで大きく変わりますし、その姿勢は必ず外国人材にも伝わります。人として向き合う覚悟を持てるかどうか。それが、これからの建設業界に問われていることだと思います。
採用にあたって、理解しておくべきことはなんですか?
私はJAC理事長としての立場に加え、一企業の経営者として現地で面接を行う機会もあります。そうしたなかで実感するのは、外国人材一人ひとりに異なる“背景”があるということです。たとえば、家族の期待を背負っていたり、経済的な事情や家長制度の影響を受けているケースも少なくありません。
大切なのは、彼らの背景に理解を寄せ、表面的な情報だけで判断しないことです。それを理解しているだけでも、より深く、より信頼できる関係性が築けるようになると考えています。また、そうした背景に寄り添う姿勢があればあるほど、外国人材の方々にとっても安心材料となり、「ここでならがんばれる」と思える動機づけにもなるはずです。
三野輪理事長が実際に採用する際には、どんな点に注目していますか?
即戦力や経験値の高さばかりに目を向けるのではなく、私は“素直さ”や“吸収力”を重視しています。大切なのは、わからないことを「わからない」と言えるかどうか。あるいは、周囲に助けを求められるかどうかです。
黙ってしまうのではなく、勇気を持って発信できる人は確実に成長していきます。そうした“伸びしろ”を持つ若者を、企業側がどう育てていくか。まずは信頼して、話を聞き、時間をかけて受け止めていく。その姿勢があってこそ、人材が定着し、やがて企業の力になっていくのだと思います。
制度の本質を理解し、戦力として育てる
仕事の定着や育成のために、企業ができることは何でしょうか?
建設業界では今、人手不足が深刻化しています。仕事があっても人材が確保できなければ、業務が滞るだけでなく、工法そのものを変えざるを得ない場面も出てきます。そうしたなか、特定技能の制度を「一時的な人材補塡」としてではなく、日本人と同様に中長期的に活躍してもらう制度として捉え直すことが、企業に求められています。
たとえば、処遇を改善する、1級技能士取得などキャリアの道筋をつくるといった動きが、全国の企業で広がり始めています。今後は「育成して戦力にする」ことへ注力していく取組みは欠かせません。定着や人材確保に悩む企業こそ、特定技能制度を正しく理解し、戦略的に活用していくべきです。制度の本質を見誤らず、“ともに未来をつくる存在”として迎え入れることが、現場と経営、双方の持続可能性につながっていくと感じています。
最後に、受入企業へのメッセージをお願いします
JACは設立から7年目を迎え、中長期的なキャリア支援を見据えた事業をさらに強化しています。技能講習やオンライン特別教育など、現場で役立つ支援メニューを拡充し、企業の声に応える体制を整えてきました。特定技能外国人は4万人を超え、専門工事業を中心に、いまや外国人材は業界に欠かせない存在となりつつあります。
こうしたなかで、外国人材の定着や成長には、私たちJACの取組みに加えて、やはり企業の「トップの姿勢」が何よりも大きな影響を持つと感じています。経営者や上層部が「日本人と同じように仲間として迎え入れよう」と本気で思い、その姿勢を行動で示すことで、職場の空気は自然と変わっていきます。その結果、「ここはいい会社だよ」と働く本人たちが後輩に勧め、良い人材が集まってくる。“人が人を呼ぶ”好循環が生まれるのです。
JACとしても、制度の整備だけでなく、そうした“関係性”の土壌づくりを後押しし、現場の未来をともに支えていきたいと考えています。