設計業務をベトナムへ移管する
新しいカタチの海外展開
SUGAWARA VIET NAM Co.,Ltd
母国に帰国した外国人就労者と連携し、海外進出を果たしたのが水道設備事業を手掛ける株式会社菅原設備です。2019年にベトナムの観光地としても有名なダナンへと進出し、現地法人「SUGAWARA VIET NAM」を設立。日本の技術と技能を海外で広めるその取組みには、フオンさんというベトナム人の信頼できるパートナーが深く関わっていました。
聞き手:JAC編集部
2024年9月25日取材
株式会社菅原設備
代表取締役社長
菅原 直樹 さん NAOKI SUGAWARA
株式会社菅原設備の菅原 直樹さん
母国でも技術と技能を活かせる職場を作りたい
事業内容を教えてください
現地法人「SUGAWARA VIET NAM(以下、菅原ベトナム)」では、株式会社菅原設備で行っている日本の設計業務の約80%を担当しています。具体的には、日本の自治体ごとに異なる図面規格に合わせた設計業務をベトナムで行い、配管の施工も一部手掛けています。わかりやすく言えば、設計を行う部署をそのままベトナムへ移したというイメージです。これによりCADを使える優秀な人材を安定的に確保でき、また人件費なども日本で採用した場合と比べたら、コストダウンできるというメリットがあります。
海外展開のきっかけはなんだったのでしょうか?
2017年に国土交通省が主催するミャンマーへの視察団に参加したことです。現地で水道インフラが整備されていない様子を見て、これは市場として大きな可能性があると感じました。そして、同時に技能実習生が帰国後に日本での経験を活かせていない現状を知り、何とか彼らの母国でも技術と技能を活かせる場を作りたいと考えるようになったのです。そこで、当社ではミャンマーとベトナムに進出することを決定しました。
ちょうどその頃、入社したのが菅原ベトナムで代表を務めているフオンさんです。彼が入社して3年経った頃に、「母国で水道技術を広めるため、現地法人を設立したい」という話をされて、そこから本格的にベトナムでの事業展開が始まりました。
現地法人を立ち上げるためにどのような手順を踏んだのでしょうか?
実は、彼が自ら事業計画書を作成し、資本金の半分を負担してくれたので、私はほとんど何もしていません。彼一人で事業の立ち上げに必要な手続きや準備など一式をすべて段取りしてくれたのです。実際に私自身がベトナムへと足を運んだのは、菅原ベトナムがオープンするタイミングでした。フオンさんが信頼できるパートナーとして現地で何もかも整えてくれたおかげで、本当にすべてがスムーズに進みました。
図面はすべて日本語表記
ベトナムのスタッフが研修で来日する制度を導入
進出先にベトナムのダナンを選んだ理由は?
フオンさんの出身地だからです。自分の立場に置き換えて考えた時、愛知県に生まれ住んでいるのに北海道や九州で新たな事業を立ち上げろと言われたら、少し心が折れてしまうかもしれません。同じように、彼がどこで働きたいかを考えた時、ダナンが適していると思いました。やはり、自分が一番働きやすい環境で事業を展開することが、成功率を高める鍵になると感じたので、そこでGOサインを出しました。
作成した図面のチェックはフオンさんが行う
現在では本社である菅原設備とどのような連携を取っていますか?
現在、菅原ベトナムで採用したスタッフが1年間、日本で研修を受ける制度を導入していて、日本式の仕事の進め方を学んでもらっています。まず日本の現場で基本的な水道配管の技能を学び、次に設計業務に取り組むという流れです。また、ベトナムと日本の連携は、共有サーバーを活用して図面やデータをリアルタイムでやり取りする体制を整えており、定期的に日本側の責任者とも連絡を取り合っています。
「フオンには安心してすべてを任せています」(菅原さん)
今後の展開について教えてください
コロナ禍の影響でストップしていたベトナムでの事業を拡大していきたいと考えています。特に、現地での配管工事の受注を増やし、現地の技術者たちが中心となって働ける体制を作っていくのが目標です。また、日本で技能実習生として仕事をしているベトナム人たちが帰国後に活躍できるような環境も整備していく予定です。フオンさんのおかげで、設計業務の効率化やコスト削減にも成功しています。次は、ベトナムでの成功をほかの国にも広げ、さらなる海外展開を目指していきます。
SUGAWARA VIET NAM Co.,Ltd
Managing director
フィン ゴック フオン さん HUỲNH NGỌC PHƯƠNG
SUGAWARA VIET NAM Co.,Ltdのフィン ゴック フオンさん
現地での採用基準や育成について教えてください
まず最優先なのはCADが使えることです。次に日本語ができれば良いですが、ほとんどのスタッフは最初、日本語がまったくわかりません。特に専門用語は難しいです。そこで、仕事をしながら一緒に勉強していく形をとっています。仕事後に1~2時間、専門用語を学ぶ時間を設けて、スタッフと共に学び続けています。
今後のベトナムでの展開で課題はありますか?
日本とベトナムの建設業には大きな違いがあります。
日本では水道、電気、ガスとそれぞれ事業者が分かれて担当しますが、ベトナムではほとんどの作業が同じ事業者によって行われます。水道だけで仕事をもらうのは難しく、また、日本とベトナムでは配管の規格が異なり、日本の規格をそのまま使うことはできません。それでも、日本の水道技術をベトナムで広め、一般化することが私たちの目標です。