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MESSAGE / インタビュー

SPECIAL / スペシャル 2025.05.30

魅力的な就業先として
日本の建設業を選んでもらえるよう
一層の努力を

JAC 理事長 三野輪 賢二 Kenji Minowa

一般財団法人 建設経済研究所
理事長
佐々木 基 Motoi Sasaki

 特定技能制度および技能実習制度により、来日して建設分野で働く外国人は年々増加しています。とはいえ、建設業における人手不足は世界的な課題。就業先として日本が選ばれるために、何が必要なのか。JACの三野輪賢二理事長と一般財団法人 建設経済研究所の佐々木基理事長が対談を行いました。

聞き手:JAC編集部 2025年3月25日取材

JAC理事長 三野輪 賢二 Kenji Minowa × 一般財団法人 建設経済研究所 理事長 佐々木 基 Motoi Sasaki
“育成”への意識を高める経営を
建設分野での外国人の雇用の現状と課題についてお聞かせください
三野輪

 2024年12月の出入国在留管理庁のデータによれば、建設分野の特定技能1号は3万8,365人、2号は213人です。受入対象国は現在12カ国。外国人の働き手はこの数年で格段に増加し、2027年には目標としている8万人に達することが予想されます。その多くが3年にわたる技能実習を経て移行した人ですが、技能評価試験と日本語試験に合格して最初から特定技能1号として来日する人も増えています。
 2号になるためには職長・班長として一定期間の実務経験を積み、さらに評価試験に合格する必要がありますが、試験に限れば合格者はすでに約1,000人。彼らも実務経験を積んで、いずれは特定技能2号となり、日本で長く働いてくれるものと期待しています。

佐々木

 来日して働き、経験を積んだ方々に、「日本が気に入ったから、引き続きここで働きたい」と思ってもらえているということでしょうか。

三野輪

 そういうことですね。ベトナムの送り出し機関によれば、韓国やオーストラリアがより高い給料を提示しているにもかかわらず、必ずしも皆がそちらを希望するわけではないということでした。相応の給料は必要ですが、まだまだ日本も人気があるのです。

佐々木

 特に日本の現場では、「人を育てよう」という意識を持っていますから、それが伝わっているのでしょう。日本人のもとで働いた外国人は、日本に対する尊敬の念を持ってくれることが多いようですね。
 一方で、外国人技能者と直接関わった経験が少ない経営者のなかには、まだ「外国人=安い労働力」と考える人もいらっしゃるようです。そうした方々にも、外国人に働いてもらうためには職場環境を整える必要について、認識を改めていただきたいですね。

三野輪

 特定技能制度は、給料を含め待遇を日本人と同等にすることを定めています。CCUS(建設キャリアアップシステム)の登録も義務化していますから、就業履歴をきちんと蓄積して育成に活かしていただくことが大切だと思います。また、新たに育成就労制度が創設されることも踏まえ、外国人技能者の育成プランについても議論が必要です。例えば、「何を目指すか」という問題意識や就業期間内で取得するスキルやレベルについて、会社として外国人技能者と共有し、サポートを提示することが理想的でしょう。そういった取組みが、経営者の皆さんの外国人技能者の育成への意識を高めることにつながるはずです。

佐々木

 すぐに効果は出なくとも、人を教育すれば必ず成果は返ってきます。「新たに人を育てるということは金も時間もかかるもの」と、皆が気持ちを新たにしなければならないでしょう。

三野輪

 インドネシアの工業高校で教員の方々に行ったアンケートを分析すると、日本に期待されているのはやはり「人材育成をしっかりしてくれる」という点のようです。つまり、各企業が育成の意識を高めていくことで、より働き先として選ばれる国になれる。逆に、そうしないと外国人の働き手はよその国に行ってしまう。今から少しずつ、考え方を変え、仕組みを整えていかなければなりません。ここが踏ん張りどころだと思います。

JAC理事長 三野輪 賢二 Kenji Minowa
技能実習・特定技能の対象国拡大への対応が急務
さまざまな国から外国人の働き手が来日しています。この動きは今後も拡大していくのでしょうか
佐々木

 私は先日、東ティモール民主共和国に行ってきました。インドネシアの東南部に位置する島国ですが、東ティモールには若者が非常に多いのに、仕事がほとんどないのです。そのため、日本に対して強い魅力を感じているようです。同国には政府系の送り出し機関があり農業分野で技能実習生が来日していますが、建設分野にはまだ来ていません。
 国交省では今後も段階的に建設分野の特定技能制度の受入対象国を増やしていく予定のようです。働き手を送り出してもらうためには相手国との信頼関係構築が何よりも重要ですが、一朝一夕にはできません。これを実際に行うのがJACの皆さんですが、そうするとますます体制を強化する必要がありますね。

三野輪

 各国と地道にそのような信頼関係を築いていくことが、今後のわれわれの使命になると思っています。

佐々木

 これはアイデアのひとつなのですが、日本の大手ゼネコンは東南アジア諸国を中心に拠点を持ち、多くの社員が駐在しています。長い人は30年近くそこで仕事をしており、各国の事情に精通しています。なかには、退職後も現地に住んでいる人もいます。JACが各国で地道な信頼関係を築く段階では、そういった方々から協力を得ることも考えられるのではありませんか。

三野輪

 それは面白いアイデアですね。まだ関係づくりが進んでいない国のなかにも、「わが国からも人を雇い入れてほしい」というところが出てくるでしょう。それに対応するためにも、協力者を確保していかなければならないと思います。

一般財団法人 建設経済研究所 理事長 佐々木 基 Motoi Sasaki
技術・技能の継承には日本人の入職者も不可欠
日本人の担い手については、どのような課題があるでしょうか
三野輪

 建設経済研究所から先般発行されたレポート(「建設経済レポート No. 77」2025年3月号)では、現在の日本の状況では「人がいないため、今後の建設投資は減っていくだろう」という予想がされていました。

佐々木

 こなせる仕事の量は確実に減っていくでしょう。ただ、本来は「これだけの仕事が必要なので、そのために人手不足をどのように解消していくか」という思考パターンでないといけないと思います。

三野輪

 おっしゃるとおりですね。建設業で担い手不足が言われ始めてから相当の時間が経過しました。それを補うために外国人の働き手を求めてきましたが、果たしてそれが技術や技能の継承にまでつながるか。大いに疑問であり心配せざるを得ません。「日本人がいないと技術や技能が継承できない」という産業は専門工事業界のなかにも多々あります。新規入職者の激減状況を見ると、このままでは建設業における日本人の総数はどんどん減っていってしまうでしょう。

佐々木

 それはもはや、日本だけの問題ではなく、同じような状況に陥っている国は少なからず散見されます。

三野輪

 確かに、世界的に担い手不足は深刻な課題になっていますね。ただ一方で、人材確保に成功している例もあります。ヨーロッパに視察に行った折、印象的だったのは、働き方の縛りを非常に緩くしていることでした。
 ヨーロッパで一番栄えている専門工事業は石工(いしく)です。道路や歩道は舗装するより石を敷くことが多いため、何年かに一回必ず補修があり、「石工の技術を磨けば一生飯が食える」というほど仕事量が多いからです。驚いたのは、彼らが明るくなったら働き、午後3時になったら仕事は止めてしまうことです。以降の時間は自分自身や家族のために使える。なおかつそれなりの給料が出るので、働く人を確保できるのです。もちろん、日本でそのまま取り入れるのは難しいですが。

佐々木

 日本も気候変動の影響で夏の暑さが厳しくなり、夏場の野外での仕事はかなり過酷になっています。厚生労働省も検討しているようですが、もっとさまざまなアイデアが出てきてもよいでしょう。8月、9月は酷暑で仕事にならないのだから休みにして、ほかの月は時間を延長して仕事量を確保するなど、方法はあるはずです。

三野輪

 今後はそういったフレキシブルな働き方が必要ですね。ただ、工期を守ることも大事ですから、やはり発注者にご理解いただかなければなりません。そういった意見が業界内から出てくると大変ありがたい。そのような、日本人の入職者を増やすための施策については、今後さらに議論が必要だと考えています。

JAC理事長 三野輪 賢二 Kenji Minowa × 一般財団法人 建設経済研究所 理事長 佐々木 基 Motoi Sasaki