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MESSAGE / インタビュー

SPECIAL / スペシャル 2024.12.13

受入環境の整備・改善が
日本の建設業の
持続可能な未来をつくる

JAC理事長 三野輪 賢二 Kenji Minowa

一般財団法人建設業振興基金
理事長
谷脇 暁 Satoru Taniwaki

 日本の建設業の未来を支える「特定技能制度」の可能性をテーマに、JACの三野輪賢二理事長と一般財団法人建設業振興基金の谷脇暁理事長が対談を行いました。

聞き手:JAC編集部 2024年7月10日取材

JAC理事長 三野輪 賢二 Kenji Minowa
外国人材を惹きつける魅力づくりが必須になる
外国人材が増加している現状について、お二人のご意見をお聞かせください
三野輪

 まず日本の建設業界では、日本人の入職者が著しく減少しているのが現実です。特に若年層になると、建設業に興味をもたない、もってもらえないという状況が続いています。しかし一方では、近年多発している災害への対応や、インフラ整備のニーズが高まり、現在の日本の労働力だけでは需要を満たすことが難しくなっています。そのため、技能実習生や特定技能外国人を求める声は増えており、採用が急速に進んでいるのです。これまで特定技能外国人の受入れ人数の目標数は3万4,000人でしたが、2028年度までに受け入れる外国人の見込み数を最大で8万人としました。JACとしては、この目標に向けて積極的に活動を進めていく考えです。

谷脇

 特定技能制度の創設が2019年ですから、短期間で8万人の外国人材を採用するのは大きな挑戦になると思います。しかし、少子化が進むなかで、日本人労働力の減少は避けられないでしょう。建設業界の持続可能な発展を支えるためには、外国人材の確保が不可欠です。8万人という数字は、あくまでスタートラインであり、今後さらに増やしていかなければならないと感じています。とはいえ、外国人に数ある国のなかから日本を選んでいただくことは容易ではありません。建設業界に外国人材を惹きつけるためには、魅力的な職場環境を作り出す必要があります。

三野輪

 さらに、他の業種でも特定技能外国人の募集が盛んになっています。最近では、イオンがグループ企業を通して2030年度までに4,000人の外国人材を受け入れる計画を進めていることを発表しました。こうした動きは各業界で見られ、国内での競争が激化することが予測されます。建設業界もより多くの外国人材を惹きつけるための施策を講じる必要は間違いなくあるでしょう。

谷脇

 そうですね。特定技能として活躍できる外国人材を確保するには、その前段階の人材をどれだけ集められるかが鍵となります。そのためには、日本だけでなく、海外でのプロモーションも欠かせません。JACが海外で行っている取組みは、まさにその一環であり、非常に重要な役割を果たしていると思います。

三野輪

 ありがとうございます。2024年8月にはインドネシアで学校関係者と学生、また日本や現地のメディアも呼んで、職種別に現場を再現して仕事内容を体験していただく建設業務体験会を開催しました。また、今後は同様の取組みを他国でも展開していく予定です。日本の建設業の魅力を戦略的に海外へ伝えていくPR活動は今後必須になると考え、徐々にですが進めています。

JAC理事長 三野輪 賢二 Kenji Minowa
スキルアップの機会を提供することも重要
より良い外国人材を採用するためにはどんなことが必要でしょうか?
谷脇

 外国人材を受け入れるだけでなく、彼らが日本の建設業界で長く働けるようにするための教育訓練も重要だと思います。日本人就労者と同様に、外国人材にも継続して働いてもらうためのフォローは不可欠です。特に、彼らが特定技能1号、2号に移行できるような道筋を支援してあげることは必要でしょう。本財団が運営しているCCUS(建設キャリアアップシステム)も、この支援の一環として重要な役割を果たすと考えています。具体的には、CCUSを通じて、技能や資格の取得状況、勤務履歴などが一元管理され、適切な評価と報酬が得られる仕組みが整います。これにより、外国人材にとってもキャリアパスが見えやすくなり、モチベーションの向上にもつながるはずです。

三野輪

 私たちもCCUSが多くの現場で活用されることを望んでいます。その文脈でお話しすると、多くの企業から要望が寄せられているのが外国人材の教育です。母国語での資格取得講座は存在しますが、うまく運用されていないのが現状です。そこで、建設業労働災害防止協会と協力し、今年からWEBで資格取得が可能な特別教育を開始しました。例えば、自由研削砥石や丸のこ取り扱い、酸素欠乏症予防の講習などです。さらに、今秋からは高難度の資格取得にも対応できるように準備を進めています。こうした取組みは、外国人材のスキルアップに大きく貢献すると考えています。また、CCUSを通じて、こうした資格やスキルが正当に評価されるようになれば、外国人材のモチベーションも高まるでしょう。

谷脇

 決して無視できない問題が、許可なく外国人就労者を業者に紹介する“闇ブローカー”の存在です。これまでは技能実習生が「稼げる」の誘い文句に乗ってしまい、失踪するケースもありました。しかし、CCUSが浸透していけば、キャリアを積み、その先には特定技能1号、2号を目指すという道筋を示すことができます。最近の日本人の若者は、「自分をどう育ててくれるのか」を重視する傾向があるといわれています。企業側も教育訓練の体制を整え、スキルアップの機会を提供することが求められています。これは決して日本人に限らず、世界においても同様の声があるのではないかと思います。

訓練施設の拡充も業界内の課題の一つではないでしょうか?
三野輪

 日本の建設業界では、教育訓練の制度がまだ十分に整っていないのが現状です。例えば、富士教育訓練センターのような施設がありますが、すべての外国人材が受講できるキャパシティはありません。そのため、企業や地方自治体が独自に教育プログラムを実施していますが、それでも不足している状況です。東京都では、特定技能外国人向けの教育プログラムを無償で提供していますが、ほかの都道府県では同様の取組みが進んでいません。今後は、全国的に教育訓練の体制を強化する必要があります。

谷脇

 そうですね。特に、キャリアアップのための訓練を体系化し、資格や経験年数と並んで評価の一部とすることで、より効果的な教育が可能になります。訓練を受けた履歴が残る仕組みを整えることで、外国人材にとっても安心して働ける環境が整います。これが、新しい人材を惹きつけるための重要なアピールポイントになるでしょう。

JAC理事長 三野輪 賢二 Kenji Minowa
労働条件や職場環境の“質”の向上を目指す
外国人の労働条件についてはいかがでしょうか?
三野輪

 アメリカやヨーロッパを見ると、専門学校に一定期間通って単位を取得したら、企業に勤めた際にはある程度の給与額からスタートする仕組みができています。しかし、同じ先進国でも日本はなかなかそれが実現できていない。その点についてもJACは大きな課題と捉えています。世界基準と照らし合わせても劣ることのない受入体制があれば、より優秀な外国人材からも注目されるはずです。

谷脇

 外国人材が日本で働くことに誇りをもち、長く働き続けるためには、業界全体でのサポートが必要です。そのためにも、労働条件や職場環境の質を向上させることは必要不可欠です。外国人材が建設業界で重要な役割を果たすことは、日本の経済と社会の安定にもつながります。

三野輪

 今後は、外国人が日本で安心して働けるように、業界全体で支援していくことが求められます。これからも、JACとしては外国人材の教育には特に力を入れていきます。建設業界における外国人材の存在感はますます大きくなるばかりです。現状ではまだ課題が多いですが、外国人が日本の建設業界で長期的に働けるような仕組みづくりをJACが中心となって進めていきたいと思っています。

谷脇

 JACの取組みは、たいへん重要だと思います。おおいに期待しております。日本の建設業が持続可能でよりよい未来に向かうよう関係者で力を合わせてまいりましょう。

JAC理事長 三野輪 賢二 Kenji Minowa