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MESSAGE / インタビュー

SPECIAL / スペシャル 2024.05.30

世界と人材獲得を競う時代、
支援サービスの拡充で
建設業の魅力を発信

JAC理事長 三野輪 賢二 Kenji Minowa

JAC理事長 三野輪 賢二 Kenji Minowa

 技能実習制度や特定技能制度に大きな変化が起こりつつある今、JACはどのような取組みを行っていくのか。三野輪賢二理事長に詳しく伺いました。

聞き手:JAC編集部 2024年3月27日取材

外国人が中長期に活躍できる環境を整備
令和6年度の主な取組みを教えてください

 主に特定技能外国人が建設業界において中長期的に活躍できるキャリアパスの構築支援を進めています。具体的には、2号特定技能外国人への移行も見据えた1号特定技能外国人のスキルアップや、海外における優秀な外国人材の確保、特定技能外国人にとって働きやすい職場づくりなどの支援です。
 そのなかでもすでにスタートしているのが、インドネシアなど海外でも実施している特定技能1号評価試験です。現状の合格率はそれほど高くはありませんが、それは予測していたことです。なぜなら一定期間、現場経験のある技能実習生とは違い、経験ゼロから試験に挑む方も多いので、苦戦するのは当然です。むしろ、ある程度のハードルの高さを設けておかなければ、優秀な人材確保へとつなげることは難しいでしょう。とはいえ、外国人に試験へのモチベーションを上げてもらうためにも、勉強への支援も必要で、今後の課題だと考えています。

正会員団体による海外現地での技能訓練も増えています

 例えば日本型枠工事業協会では、インドネシアで特定技能として日本企業に入職が決まった人たちに、入国前に技能訓練を行う取組みをスタートしています。また、入国許可が下りるまでの期間を利用して日本語教育を行い、あいさつや自己紹介ができるなど日常会話をマスターしてから日本へ来てもらうといったことも実施しています。現地で特定技能評価試験に合格した人は初めて来日する場合がほとんどなので、入職前の技能や言葉の学習に関する支援は今後さらに必要になると考えています。

JAC理事長 三野輪 賢二 Kenji Minowa
世界から見て魅力的なサービスを提供していく
最近のトピックとして、技能実習制度を発展的に解消し育成就労制度を創設する法案が閣議決定(取材日時点)されましたが、その影響は?

 外国人技能実習制度について、2022年から有識者会議で議論が進められてきましたが、政府は新制度として「育成就労」を新設する法案を閣議決定しました。法案が成立すれば2027年までの施行を目指すこととなり、そうなるとこれまでの特定技能へ移行の流れが大きく変わります。新制度が施行されれば、育成就労として働く間に特定技能評価試験などに合格して特定技能へ移行するか、もしくは特定技能評価試験などに合格して特定技能として入職するか、どちらかになります。そうなると、私は後者が増えると予測しています。そうなった場合、トラブルなくスムーズに試験を行えるよう、今後を見据えた体制づくりを進めているところです。

特定技能外国人が増加することを踏まえて、注力している取組みはありますか?

 力を入れているのは、労働安全衛生法で定められている資格取得への支援です。現在、特定技能外国人は二万人を超えており、技能実習と合わせれば十数万人の外国人が建設業で働いています。今後さらに増えることを考えると、外国人の怪我や事故の件数が増加していく可能性は十分あります。資格を取るということは知識を身につけるということ。事故リスクの回避につながることなので、資格取得は急務といえるでしょう。資格取得支援の拡充はJACが取り組むべき施策のひとつだと考えています。
 そうしたなか、課題となったのが技能実習生や特定技能評価試験に合格したばかりのまだ日本語が不得意な人たちに、どのようにして講習を受けてもらうかです。そこでJACでは今年度から「新規入職者教育」「足場・フルハーネス等の特別教育」の母国語でのオンライン講習をスタートします。ひとまず2つの講習から始めますが、今後、講習の数を順次増やしていく予定です。

日本語教育の需要も増えるのではないでしょうか?

 そのとおりです。改正法案が成立すれば育成就労が特定技能へ移行するには試験に合格することが条件になります。その試験のひとつが日本語能力試験で、N4相当に合格する必要がありますが、私たちが考えなければならないのは、彼らの学習機会についてです。仕事から疲れて帰ってきて、翌日も早くから出勤する日々の中、勉強するのは大変なことです。そうなると、忙しい平日ではなく土日にオンライン講習を行うといった支援も必要になります。ただでさえ日本語はひらがな、カタカナ、漢字があり、「てにをは」など文法構成が他言語と比べ特異であるともいわれます。だからこそ、日本語学習は「質と量」が大切で、JACによる支援が求められている部分だと思います。

そうした支援は日本で働こうと考える人たちにとって魅力になりますね

 現在、特定技能のような制度は世界各国にあり、いかに優秀な人材を呼び込むか、競争になっています。しかし、日本にいると、そうした情報がなかなか入ってこないのが実情です。例えば、昨年まではオーストラリアや韓国といった国が比較的給料が高く稼げることで人気となっていました。ですが、現在はまた事情が変わって、ヨーロッパの給料が高騰し人気が高まっています。
 いまや建設業は、国内でほかの分野と競い合うだけでなく、他国にも負けない魅力をもたなければ人材を獲得できない時代です。日本の特定技能制度はより優れた制度へと進化していかなければなりません。そのためにも、各国の動きについて情報収集しながら、世界から見ても魅力的な支援サービスを提供していくことが、JACの役割だと自負しています。