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HINT / 共生のヒント

helpful / お役立ち 2024.03.29
共生のヒント

外国人雇用の展望と
企業の戦略

 日本では年々、外国人就労者が増加しています。その背景には、戦後日本の生産年齢人口の減少と、若手の担い手不足が大きく関係しています。では今後、日本の雇用情勢はどのように変化していくのでしょうか?気になる国内の外国人雇用の展望を解説します。

弁護士法人 Global HR Strategy 代表社員弁護士 杉田 昌平 さん

弁護士法人 Global HR Strategy
代表社員弁護士
Shohei Sugita
杉田 昌平 さん

 弁護士(東京弁護士会)、入管届出済弁護士、社会保険労務士。慶應義塾大学大学院法務研究科特任講師、名古屋大学大学院法学研究科日本法研究教育センター(ベトナム)特任講師、ハノイ法科大学客員研究員、法律事務所勤務等を経て、現在、弁護士法人 Global HR Strategy 代表社員弁護士、独立行政法人国際協力機構国際協力専門員(外国人雇用/労働関係法令及び出入国管理関係法令)、慶應義塾大学大学院法務研究科・グローバル法研究所研究員。

日本の外国人雇用

 皆さんは、日本にはどのくらい外国人が在留しているかご存じでしょうか。出入国在留管理庁が公表している統計では、2022年6月末時点で、296万1,969人の方が日本に在留しています。
 また、厚生労働省が公表している統計では、2022年10月末時点で、182万2,725人の外国人が日本で働いてくれています。この人数は、雇用状況を把握することが開始されて以来、最も高い数値となっていて、新型コロナ禍でも増加していました。
 新型コロナウイルスが感染拡大した際には、水際措置として、国境が閉じていて海外から日本に来ることが難しい時期もありました。
 しかし、その期間にも、図1の表のとおり、日本で働く外国人の数は増加しています。その背景には、とても強い外国人雇用に対する期待があると思います。
 では、この強い外国人雇用への期待はどこからくるのでしょうか?

図1 「外国人雇用状況」の届出状況まとめ【本文】(2022年10月末現在)より作成

図1 「外国人雇用状況」の届出状況まとめ【本文】(2022年10月末現在)より作成

外国人雇用が増加する背景

 外国人雇用が増加している背景には、ありきたりですが、少子高齢化による担い手不足が挙げられます。日本では、ずっと今のような担い手不足にあったかといえば、そうではありません。図2の表は、1948年から2002年までの日本に在留する外国人の数の推移を表したものです。これをご覧いただくとおわかりのとおり、戦後において日本に在留する外国人が増加し始めたのは1980年代からです。

図2 日本長期統計総覧より作成

図2 日本長期統計総覧より作成

 ですが、1950年代から1970年代まで日本は高度成長期にあり、担い手を欲していた時期にあたります。そのような社会環境にもかかわらず、諸外国からの人材の受入れを行いませんでした。それはなぜでしょうか。
 その答えは、「日本には豊富な担い手がいたから」です。図3の表は、青の線が中学校を卒業してすぐに職に就いた方の数、オレンジの線は高校を卒業してすぐに職に就いた方の数を示しています。

図3 日本長期統計総覧より作成

図3 日本長期統計総覧より作成

 このように日本では毎年、これから技術を身につけていく若手の担い手が年間60万人前後、新規に労働市場に参加していました。
 しかし、1990年代に入り、この「豊富な担い手」がいる環境は大きく変わります。日本では、「生産年齢人口」といわれる15歳から64歳の人口は、1995年の約8,700万人をピークにしてそれ以降下がっています。そして、毎年60万人が新卒として就職していたのが、2000年代に入るとその人数も20万人台へと大きく減少したことによって、国内でこれから技能を身につける若手の採用を行うのが困難になってきました。
 こういった事情が、外国人雇用への強い期待の背景にあるのだと思います。
 では、日本で働く外国人はどのくらい増えるのでしょうか。JICA緒方貞子平和開発研究所が行った研究「2030/40年の外国人との共生社会の実現に向けた取り組み調査・研究報告書」によれば、2040年に約674万人の外国人に日本で働いてもらわないと、目標となる経済成長はできないという結果が出ています。
 約674万人というと、働く人の約10人に1人が外国人になる数字です。このように、今後、日本国内では、職場などさまざまなところでバックグラウンドが異なる人と一緒に生活し、仕事をする「内なる国際化」というべき現象が起きると思います。
 そして、外国人が日本で働くのがより当たり前になっていくなかで、「外国人雇用」は「取り組む」「取り組まない」という視点で考える事象ではなく、外国人と一緒に働くことは前提であり、多様なバックグラウンドの人が活躍することができる組織を創っていく必要があるものといえます。

建設分野と外国人雇用

 外国人雇用への期待が高まっているのは、建設分野においても同様です。2022年10月末時点では、11万6,789人の外国人が建設業分野で働いてくれています。また、技能実習機構が作成している「令和3年度外国人技能実習機構統計」によれば、技能実習計画の認定件数を職種・作業別に見ると、2020年度・2022年度においても、産業分野としては建設関係が一番多く、外国人が働く職業としても、建設業は重要な位置にあることがわかります。

外国人が日本へ期待すること

 では、なぜ外国人は日本を選んでくれているのでしょうか。法務省が委託して行われた調査の結果である「令和3年度 在留外国人に対する基礎調査報告書」(65頁)を見ると、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格で働いている外国人のうち、日本に来た理由として「スキルの獲得・将来のキャリア向上のため」と答えた方は全体の39.4%で、同在留資格のなかでは一番多い理由でした。「技能実習」の在留資格を持つ方についても42.1%で、「お金を稼ぐ・仕送り(送金)のため」の48.0%に次いで多い答えとなっています。
 こういった調査結果を見ると、日本は、スキルアップを目的とした外国人から選ばれている国であることがうかがい知れます。
 建設業は技能が重視される産業分野であり、技能の向上と待遇の連動も見えやすい分野だと思います。また、日本の建設分野では当然の労働安全衛生基準も、開発途上国・地域の建設現場では「ヘルメットをしていない」「ハーネスを付けずに高所作業をしている」といった例は少なくなく、十分な労働安全衛生基準であるといえない就労場所も多いようです。労働環境としても、日本は優れているといえるでしょう。
 今後、より多くの外国人に日本で、そして、建設業で働くことを選んでもらえるよう、これまで以上の企業努力が必要になるはずです。そして、外国人が「日本で働いて良かった」と思えるような技能の向上機会と待遇を用意することが、より重要になっていくのだと思います。